出典:本田技研工業
ホンダ S660は、その速い走りから「軽じゃない」と評されることが多い軽自動車です。軽自動車でありながら、5ナンバー登録やワイドボディ化、白ナンバー装着の話題が絶えません。さらに、エンジン スワップや800cc化といったカスタム、気になる後継車の噂まで、その存在感は規格を超えています。
この記事では、S660が「軽じゃない」と言われる理由を、維持費(税金や保険料)の側面も含めて詳しく解説します。
記事のポイント
- S660が「軽じゃない」と言われる走行性能の理由
- 軽自動車としての規格とナンバープレート(白ナンバー等)の関係
- ワイドボディやエンジン改造(800cc化など)の可能性
- 税金や保険料といった軽自動車としての維持費の実態
「ホンダ S660は軽じゃない」は本当?

- ホンダ S660と軽自動車の規格
- ホンダ S660が速いと言われる理由
- S660の5ナンバーや白ナンバーの謎
- 白ナンバーの正体
- 税金は軽自動車と同じ?
- 保険料の相場
- 口コミに見る「軽じゃない」評価
ホンダ S660と軽自動車の規格
ホンダ S660は、その見た目や走行性能から「軽じゃない」と感じられることがありますが、車両の規格としては紛れもなく「軽自動車」です。
日本の軽自動車規格は、法律によって厳格に定められています。S660(型式:JW5)は、この規格の枠内に完全に収まるよう設計されています。
S660のスペックと軽自動車規格
| 項目 | ホンダ S660 (JW5) | 軽自動車規格(上限) |
|---|---|---|
| 全長 | 3,395mm | 3,400mm以下 |
| 全幅 | 1,475mm | 1,480mm以下 |
| 全高 | 1,180mm | 2,000mm以下 |
| 排気量 | 658cc (0.658L) | 660cc以下 |
| 乗車定員 | 2名 | 4名以下 |
| 最高出力 | 47kW (64PS) | 自主規制値 64PS |
このように、S660は全長、全幅、排気量のすべてにおいて軽自動車の基準を満たしています。乗車定員が2名である点や、全高が極端に低い点は、一般的な軽ハイトワゴンとは一線を画しますが、これらも規格の範囲内です。
「軽じゃない」という印象は、あくまでその設計思想や走行性能が、従来の軽自動車のイメージを大きく超えていることから生まれるものと考えられます。
ホンダ S660が速いと言われる理由

S660が「軽じゃない」と言われる最大の理由は、その卓越した走行性能にあります。64PSという軽自動車の馬力自主規制値は他のターボ車と同じですが、S660は「速さ」の質が異なります。
ミッドシップレイアウト(MR)の採用
S660は、エンジンを運転席のすぐ後ろ、車体の中央に近い位置に搭載する「ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)」レイアウトを採用しています。これは多くのスーパーカーやF1マシンにも通じる方式です。
エンジンという最も重い部品が車体中央にあるため、コーナリング時の慣性モーメントが小さくなり、非常にシャープで軽快なハンドリングを実現します。ユーザーレビューなどでも「コーナリングはS660の方が速い」といった評価が多く見られます。前後の重量配分も45:55と理想的で、タイヤの性能を最大限に引き出します。
参考:本田技研工業
専用開発のターボとトランスミッション
エンジンはS07A型ターボエンジンを搭載していますが、S660専用に新設計されたターボチャージャーを採用しており、低回転から力強いトルク(104N・m)を発生させます。
さらに、軽自動車としては初となる6速マニュアルトランスミッション(6MT)が設定されました。クロスレシオ化されたギア比により、エンジンの美味しい領域を保ったままスポーティーな加減速を楽しめます。これらの組み合わせが、実際の速度以上に「速い」と感じさせるダイレクトな加速感を生み出しています。
最高速度について
S660の最高速度は、他の日本の軽自動車と同様に、安全上の理由からリミッター(速度制限装置)によって制御されています。ノーマル状態ではおおよそ135km/h~140km/h前後でリミッターが作動するとされています。
ただし、これはあくまで公道での法的・安全な範囲内での話です。サーキット走行などを目的としてリミッター解除やチューニングを施した場合、一部の事例では190km/hを超える記録も報告されていますが、これはメーカーの保証外であり、公道走行はできません。
S660の5ナンバーや白ナンバーの謎
「S660で5ナンバーや白ナンバーを見た」という情報も、「軽じゃない」という印象を強める要因です。これには大きく分けて2つの異なるケースが存在します。
1. 改造による「5ナンバー(普通車)」登録
S660は軽自動車(黄色ナンバー)ですが、車幅を変更する「ワイドボディキット」などを装着し、車両の寸法が軽自動車の規格(全幅1,480mm)を超えた場合、管轄の陸運支局で「構造変更検査」を受ける必要があります。
この検査に合格すると、その車両は軽自動車ではなく「普通乗用車」として扱われることになり、ナンバープレートも普通車用の「白地の5ナンバー」が交付されます。この場合、税金や保険料も軽自動車ではなく、普通車の基準が適用されます。
2. 制度を利用した「白ナンバー(軽自動車)」
もう一つのケースは、S660で見かける白いナンバープレートの多くを占めるもので、車両自体は軽自動車の規格のまま、ナンバープレートだけを白くするものです。これは、日本で過去に期間限定で交付された「特別仕様ナンバープレート」制度を利用したものです。この場合は車両の扱いや税金・保険料は軽自動車のまま変わりません。
記念ナンバープレート制度
特に多くの軽自動車ユーザーが利用したのが、2019年の「ラグビーワールドカップ特別仕様ナンバープレート」や、2021年の「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会特別仕様ナンバープレート」です。
これらの制度では、一定の寄付金を支払う(または寄付金なしのロゴのみ版を選択する)ことで、事業用の軽自動車(黒ナンバー)や自家用の軽自動車(黄色ナンバー)であっても、普通車と同じ白い背景のナンバープレートを選択できました。
S660のオーナーには、スポーツカーとしてのデザイン性を重視し、「車体の色と黄色ナンバーが合わない」と感じる人も少なくありませんでした。そのため、この白ナンバー制度は非常に人気を集め、多くのS660がこの記念ナンバーを装着しました。
現在の制度
これらの記念ナンバーの交付はすでに終了していますが、その後も「全国版図柄入りナンバープレート」や「地方版図柄入りナンバープレート(ご当地ナンバー)」といった制度が続いています。これらも寄付金に応じてモノトーン(白背景に近い)版を選択できる場合があり、S660が白ナンバーを装着する合法的な方法として利用されています。
したがって、「白ナンバーのS660」は、そのほとんどが「軽自動車の規格のまま、特別なナンバープレートを装着している車両」であり、軽自動車であることに変わりはありません。

税金は軽自動車と同じ?

S660の維持費を考える上で、税金は重要な要素です。前述の通り、S660は(ワイドボディ化などの構造変更をしない限り)軽自動車規格の車両です。
そのため、税金も普通乗用車ではなく、軽自動車の基準が適用されます。これは「軽じゃない」走行性能を持つS660の大きなメリットの一つです。
自動車税(種別割)
毎年4月1日時点の所有者に課税される自動車税は、S660の場合「軽自動車税(種別割)」が適用されます。2015年4月1日以降に新規登録された自家用の軽乗用車(S660は全モデルが該当)の標準税額は、年額10,800円です。
自動車重量税
車検時(新車購入時は3年後、以降は2年ごと)に支払う自動車重量税も、軽自動車の区分が適用されます。S660の車両重量は830kg(6MT)~850kg(CVT)ですが、軽自動車の場合は重量にかかわらず税額が一律です。
エコカー減税の適用によって変動しますが、非適用の場合でも2年間で6,600円が標準です。
普通車との税金比較(年間換算目安)
S660を普通車(例:1.0L以下のコンパクトカー)と比較した場合、税金の差は明確です。
| 項目 | ホンダ S660 (軽自動車) | 普通車 (1.0L以下) |
|---|---|---|
| 自動車税 (年額) | 10,800円 | 25,000円 |
| 重量税 (2年車検時) | 6,600円 (年換算 3,300円) | 16,400円 (年換算 8,200円) |
| 合計 (年間目安) | 14,100円 | 33,200円 |
※重量税はエコカー減税非適用の場合 ※普通車は2019年10月1日以降登録の場合
このように、S660の税金は普通車と比較して年間約2万円近く安価であり、経済的な負担は間違いなく「軽自動車」のものです。
保険料の相場
税金と同様に、保険料もS660の維持費の大きな部分を占めます。
自賠責保険料
公道を走るすべての車に加入が義務付けられている自賠責保険(強制保険)は、軽自動車と普通乗用車で区分が分かれています。S660は軽自動車ですので、保険料も軽自動車の料金が適用されます。2025年4月以降の保険料(24ヶ月契約)は17,540円となっており、普通乗用車(17,650円)と大きな差はありませんが、区分としては軽自動車扱いです。
任意保険料
任意保険料は、S660が「軽じゃない」側面を持つか、「軽自動車」として扱われるかが複雑に絡む部分です。
任意保険料を決定する「型式別料率クラス」という仕組みがあります。これは車種ごとの事故リスクを統計的に算出し、保険料をクラス分けするものです。軽自動車にもこの制度が導入されています。
S660は「スポーツカー」という特性上、一般的な軽自動車(ハイトワゴンなど)と比較すると、事故のリスク(対人・対物・傷害・車両)が高いと判定される可能性があります。また、オーナーの年齢層が若かったり、年間走行距離が長かったりする傾向も、統計上のリスクを高める要因になり得ます。
ただし、S660が軽自動車であることに変わりはないため、ベースとなる保険料は普通車のスポーツカー(例えばマツダ ロードスターやトヨタ・86など)と比較すれば安価に抑えられる傾向があります。
最終的な保険料は、運転者の年齢条件、運転者限定特約、等級(ノンフリート等級)、車両保険の有無、補償内容によって大きく変動します。レビューなどでは「任意保険も比較的抑えられる」という声もありますが、一般的な軽自動車よりはやや高めになる可能性も考慮しておくとよいでしょう。
口コミに見る「軽じゃない」評価

カーセンサーやグーネット、価格.com、carviewといったレビューサイトや掲示板には、S660が「軽じゃない」と評される具体的な口コミが多数寄せられています。これらは大きく分けて二つの側面を示しています。
1. 軽の枠を超えた「走行性能」
最も多いのは、走行性能が軽自動車のレベルを遥かに超えているというポジティブな評価です。
- グーネットの口コミサマリーでは「走りは軽の枠を超えている」と評されています。
- carviewのレビューでは「軽自動車でここまでのポテンシャルに感動」「現代の技術を全て軽自動車に密集して作られたスポーツカー」といった声が見られます。
- 同じくcarviewみんなの質問では、「高剛性ボディを活かし、コーナリングスピードはピカイチ」「普通車を凌駕するS660の特徴」として、特にコーナリング性能が普通車以上であると指摘されています。
2. 軽らしからぬ「実用性の低さ」
もう一つの側面は、一般的な軽自動車に期待される実用性(燃費、積載性、居住性)とはかけ離れている、という点です。これはスポーツカーとしては当然のトレードオフであり、この点も「軽じゃない」と言われる要因です。
- カーセンサーの口コミサマリーでは「荷物載らない」、グーネットでは「実用性は低い」と、積載能力の乏しさが共通して指摘されています。
- carviewのレビューでは「二人乗りで荷物乗らない?そんなの不要です(笑)このS660のロマンに比べたら全く気にならない」という、実用性の低さを承知の上で、それ以上にロマン(走行性能)を重視するオーナー像が伺えます。
- また、carviewみんなの質問では、オープンカーゆえの補強による車重の増加(830kg~)を指摘する声もあり、軽さよりも剛性を優先した「軽じゃない」設計思想が議論されています。
これらの口コミから、S660は「維持費は軽自動車でありながら、走行性能は軽の枠を完全に超えた本格的なスポーツカー」であり、同時に「実用性は一般的な軽自動車とは比較にならないほど割り切られている」という両面から「軽じゃない」と評価されていることがわかります。
「ホンダ S660は軽じゃない」改造と未来

- ワイドボディ化の実際
- エンジンスワップは可能か
- 800cc化の改造について
- 後継車の情報
- 総括:ホンダ S660は軽じゃない魅力
ワイドボディ化の実際
S660を「軽じゃない」存在にするカスタムとして、ワイドボディ化は一つの選択肢です。これは、社外製のオーバーフェンダーや専用のエアロパーツを装着することで、車幅を軽自動車の規格(1,480mm)以上に広げる改造を指します。
この改造を行った場合、車両はもはや軽自動車としては扱われません。前述の通り、道路運送車両法に基づき「構造変更検査」を陸運支局で受ける必要があります。この検査に合格して初めて、公道を走行することが許可されます。
普通車(5ナンバー)登録へ
構造変更により、車両の区分は「軽自動車」から「小型乗用車(いわゆる5ナンバー)」へと変更されます。 この変更に伴い、以下の点が変わります。
- ナンバープレート: 黄色ナンバーから「白地の5ナンバー」に変更されます。
- 税金: 軽自動車税(10,800円)ではなく、普通車の自動車税(排気量は660ccのままなので1.0L以下の25,000円)が適用されます。重量税なども普通車の基準になります。
- 保険: 任意保険や自賠責保険も普通車としての契約が必要です。
- 車検: 軽自動車検査協会ではなく、陸運支局での車検(継続検査)となります。
ワイドボディ化は、S660にさらに迫力のあるスタイリングと、トレッド(左右のタイヤ間の距離)拡大による走行安定性の向上をもたらす可能性がありますが、同時に軽自動車としての経済的なメリットは失われることになります。

エンジンスワップは可能か

「S660 エンジン スワップ」は、さらに踏み込んだ「軽じゃない」カスタマイズの一つです。これは、標準のS07Aエンジン(660ccターボ)を、別の(多くの場合、より大排気量でハイパワーな)エンジンに載せ替えることを指します。
ホンダの他車種のエンジン(例えばフィットのL15Bなど)や、バイクのエンジンを流用する事例が、一部のカスタムショップや専門誌などで報告されています。中には、エンジン搭載方法をMRからFR(フロントエンジン・リアドライブ)に変更するような大掛かりな改造事例も見られます。
ただし、エンジンスワップは車両の根幹に関わる重大な改造です。
- 技術的難易度: エンジンマウントの製作、トランスミッションとの接続、電子制御(ECU)の適合など、技術的なハードルは極めて高いです。
- 法的ハードル: 改造後は、強度計算書や排出ガステストの結果など、膨大な書類を揃えて「構造変更検査」を受け、公認を取得する必要があります。
- コスト: 作業費用や部品代は非常に高額になり、車両本体価格を大きく上回ることも珍しくありません。
したがって、S660のエンジンスワップは「可能か?」と問われれば、一部の専門ショップにおいて「技術的には可能」ですが、一般的ではなく、非常に高度で高コストな改造であると言えます。
800cc化の改造について
エンジンスワップほど大掛かりではなく、標準のS07Aエンジンをベースに排気量をアップする「S660 800cc化」という改造も存在します。これは、エンジンのシリンダー内部を広げたり(ボーリング)、ピストンやクランクシャフトを変更したりすることで、排気量を660ccから800cc程度に増やす手法です。
この改造についても、一部のチューニングショップが専用のキットを開発・販売している事例が報告されています。排気量を上げることで、64PSの自主規制値を大幅に超えるパワーとトルクを引き出すことが可能になります。
排気量変更=普通車登録
重要なのは、排気量が660ccを超えた時点で、その車両は法律上「軽自動車」ではなくなるという点です。
たとえ車体のサイズが軽規格のままであっても、排気量アップの改造を行った場合は「構造変更検査」を受け、普通車(5ナンバー)として登録し直す必要があります。税金や保険料もすべて普通車の基準に変更されます。
この改造も、エンジンの耐久性や車体バランスへの影響、公認取得のハードルなどを考慮する必要がある、専門的なカスタマイズです。
後継車の情報

ホンダ S660は、多くのファンに惜しまれつつ2022年3月をもって生産を終了しました。その「軽じゃない」魅力的なコンセプトから、生産終了直後から現在に至るまで、その後継車の登場を望む声が後を絶ちません。
しかし、2025年11月の現時点において、ホンダからS660の直接的な後継車に関する公式な発表はありません。
自動車業界全体が電動化(EVシフト)や環境規制の強化へと進む中で、S660のような純粋なガソリンエンジンの小型スポーツカーを新たに開発・販売することは、ビジネス的に非常にハードルが高くなっていると考えられます。
SNSや一部の自動車メディアでは、次期モデルに関する様々な憶測やCG画像(予想図)が出回ることがありますが、それらは公式な情報に裏付けられたものではありません。
S660は、ホンダの「ビート」から続く軽ミッドシップスポーツの系譜を受け継ぐ、貴重なモデルでした。そのユニークな存在感ゆえに後継車への期待が高まりますが、現時点ではその登場は未定となっています。
総括:ホンダ S660は軽じゃない魅力
ホンダ S660が「軽じゃない」と言われる理由とその実態について、多角的に解説してきました。最後に、この記事の要点をまとめます。
- S660は全長・全幅・排気量すべてが規格内の軽自動車である
- 「軽じゃない」と言われる最大の理由はMRレイアウトにある
- 6速MTや専用ターボがスポーツカーとしての走行性能を高めている
- S660は軽自動車であり、原則として黄色ナンバーが交付される
- 白ナンバーのS660は記念ナンバー制度を利用したものが大半
- 軽自動車の規格のままナンバーだけを白く変更している
- S660の税金は軽自動車税(年額10,800円)が適用される
- 普通車と比較して税制面での経済的メリットは非常に大きい
- S660の保険料も軽自動車の区分で計算される
- ただしスポーツカー特性により料率クラスは高めの可能性がある
- ワイドボディ化の改造で普通車(5ナンバー)登録が可能になる
- 構造変更を行うと軽自動車としての税制メリットは失われる
- エンジン スワップや800cc化は専門ショップによる改造事例
- 排気量変更を行った場合も普通車登録が必須となる
- S660は2022年3月に生産を終了し、後継車の公式発表はない









