イグニスが売れない理由を検証:中古が多い背景と高速でうるさい実態

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出典:スズキ自動車(Internet Archive Wayback Machine )

スズキの個性派コンパクトSUV、イグニス。特徴的なデザインで2016年に登場しましたが、販売台数は伸び悩み、不人気という声も聞かれるようになりました。そして2024年、ついに国内向けの生産終了が発表されました。

イグニスがなぜ売れなかったのか、その理由を探ると、最大のライバルとなったクロスビーとの比較や、高速走行時にうるさいといった静粛性の問題、さらに乗ってる人から聞かれる後悔の声などが浮かび上がってきます。

また、生産終了となった今、中古市場ではなぜ中古が多い理由があるのか、現在の価格動向はどうなっているのかも気になるところです。

この記事では、イグニスが売れない理由とされた複数の要因を、データベースに基づき深く掘り下げ、生産終了後の現在の評価までを網羅的に解説します。

記事のポイント

  1. イグニスの販売台数が伸び悩み生産終了に至った背景
  2. クロスビーなど競合車との比較で見るイグニスの弱点
  3. 購入者が感じた「後悔」や「高速でうるさい」といった具体的な評価
  4. 生産終了後の現在の中古車市場の動向と価格
    目次

    スズキのイグニスが売れない理由を分析

    スズキのイグニスが売れない理由を分析

    • 販売台数の推移
    • 不人気の背景
    • 生産終了の発表
    • イグニスとクロスビー 比較で分かる弱点

      販売台数の推移

      イグニスの販売台数は、典型的な「デビュー時がピーク」のパターンを描きました。2016年2月の発売初年度は、月平均2,000台を超える約24,261台を販売し、年間ランキングでも28位と健闘を見せます。この時期は、目新しさや個性的なデザインが一部のユーザーに受け入れられました。

      しかし、その勢いは長く続かず、翌2017年には販売台数が年間11,264台と、初年度の半分以下に急落します。

      決定打となったのが、2017年12月に発売されたスズキ「クロスビー」の存在です。イグニスとコンセプトが近いクロスビーが登場して以降、イグニスの販売台数はさらに減少し、2018年以降は年間販売ランキングの50傑からも姿を消しました。

      その後も販売不振は続き、2020年には年間約2,600台、2023年には年間1,891台と、ピーク時の10分の1以下にまで落ち込みます。そして2024年には月販数十台という状況となり、国内販売の役目を終えることとなりました。

      不人気の背景

      スズキのイグニスが売れない理由を分析

      イグニスが販売不振、すなわち不人気となった背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。

      強力すぎた「スズキ内」の競合

      最大の要因は、スズキ自身の強力なラインナップです。 イグニスは「コンパクトSUV」という位置づけでしたが、スズキには軽自動車に大人気の「ハスラー」、登録車には走りや質感で評価の高い「スイフト」、広い室内を持つ「ソリオ」が存在します。

      実用性や経済性を求めればハスラーやソリオ、スペーシアといった選択肢があり、走りを求めればスイフトがあります。イグニスは、これらのモデルと比較された際に「あえてイグニスを選ぶ」という強力な理由を提示できませんでした。

      市場トレンドとのミスマッチ

      近年のコンパクトカー市場のトレンドは「室内空間の広さ」です。トヨタのルーミーやスズキのソリオが支持されるように、コンパクトながらも広い居住性や荷室が求められる傾向が強まっています。

      イグニスはAセグメントプラットフォームを採用し、全長3,700mmというコンパクトさを実現しましたが、その反面、室内空間、特に後部座席の居住性は「軽自動車のワゴンRやスペーシアよりも狭い」と評されるほどでした。この「狭さ」が、ファミリー層や実用性を重視する層から敬遠される大きな理由となりました。

      賛否が激しく分かれたデザイン

      イグニスのデザインは、過去のスズキ車(フロンテクーペなど)のモチーフを取り入れた、個性的でレトロ感のあるものでした。

      一部の愛好家からは「イタリア車風でお洒落」「骨太感がある」と高く評価された一方で、一般の消費者からは厳しい意見も多く見られました。特にリアビューのデザインに対しては、「ダサい」「日本一醜い」「安っぽい」といった酷評がインターネット上でも多く見受けられ、万人受けするデザインではなかったことが販売の足かせになったと考えられます。

      生産終了の発表

      販売台数の長期低迷を受け、スズキは2024年4月をもってイグニスの国内向け生産を終了したことを公式に発表しました。

      直接的な販売不振に加え、2024年から施行された「後退時車両直後確認装置(バックカメラなど)」の装備義務化への対応コストも影響したと見られています。販売台数が見込めない中で追加の改良投資を行うことは困難と判断され、ラインナップから外れることとなりました。

      2024年5月以降は在庫車のみの販売となり、それも同年中にはほぼ終了しました。現在は新車での購入はできず、中古車市場でのみ流通しています。

      イグニスとクロスビー 比較で分かる弱点

      イグニスとクロスビー 比較で分かる弱点

      出典:スズキクロスビー

      イグニスの販売不振を決定づけた「クロスビー」との比較において、イグニスの弱点は明確でした。両車は近い時期に販売されたスズキのAセグメント小型クロスオーバーですが、市場の評価は大きく分かれました。

      比較項目 イグニス クロスビー 比較結果
      コンセプト コンパクトクロスオーバー 小型クロスオーバーワゴン クロスビーの方がワゴン(実用性)を強調
      室内長 2,020 mm 2,175 mm クロスビーが155mmも長く圧勝
      室内高 1,250 mm 1,280 mm クロスビーがやや高い
      パワートレイン 1.2L マイルドHV + CVT 1.0L ターボ マイルドHV + 6AT クロスビーの方がパワフルで走りに余裕あり
      デザイン 欧州コンパクト風(賛否両論) ハスラー似(分かりやすいSUV) クロスビーの方が「SUVらしさ」で一般受けした
      自動車税 1.2L(30,500円/年) 1.0L(25,000円/年) クロスビーの方が年間5,500円安い

      このように、イグニスはクロスビーに対して、最大の決め手となる「室内空間の広さ」で大きく劣っていました。さらに、実際の走行性能(パワー感)や、維持費(自動車税)の面でもクロスビーに分があり、イグニスが積極的に選ばれる理由は少なかったと言えます。

      出典:スズキDIGITALLIBRARY

      イグニスが売れない理由は購入後の不満?

      イグニスが売れない理由は購入後の不満?

      • 後悔した人の共通点
      • イグニスは高速がうるさいという評価
      • イグニスに乗ってる人の特徴
      • イグニスの中古車が多い理由
      • 価格とコスパ
      • 乗ってる人の口コミ・感想レビュー
      • まとめ:イグニスが売れない理由

        後悔した人の共通点

        イグニスを購入した人から聞かれる「後悔」の声には、いくつかの共通点があります。その多くは、購入前に抱いていた「コンパクトSUV」というイメージと、実際の使用感とのギャップに起因しています。

        最も多く聞かれる不満は、やはり「室内の狭さ」です。特に後部座席は大人が長時間乗るには窮屈で、「大人4人での移動はストレス」「1時間も乗っていられない」という声もあります。また、荷室容量も決して大きくはなく、ファミリーユースや大きな荷物を積む用途には不向きでした。

        次に挙げられるのが「乗り心地の悪さ」です。欧州仕様と共通とされる足回りは硬めのセッティングで、路面の凹凸を拾いやすく、「突き上げ感が強い」と感じる人が多いようです。

        さらに、後述する高速走行時の「静粛性の低さ」も後悔のポイントとして挙げられ、日常の街乗りは良くても、長距離・高速走行を多用するユーザーにとっては満足度が低い結果となりました。

        イグニスは高速がうるさいという評価

        イグニスは高速がうるさいという評価

        イグニスは高速走行時の静粛性が低い、すなわち「うるさい」という評価が目立ちます。これは、同じスズキのソリオやクロスビーと比較しても顕著なようです。

        主な騒音源は「エンジン音」「ロードノイズ」「風切り音」の3つです。

        搭載されている1.2LのK12C型エンジンは、軽量な車体を活発に走らせる一方、高速域で巡航する際にはエンジン回転数が高めになりがちで、エンジン音が室内に侵入しやすい傾向があります。

        また、都市型コンパクトカーとしての設計思想からか、遮音材や防音材の量が限られていると推測され、タイヤが路面を叩くロードノイズも響きやすくなっています。最低地上高が180mmと高めであることから、SUV特有の風切り音も100km/hを超えると目立ってくるとの指摘もあります。

        参考:carview|サイズも値段も文句ナシ!! なんでイグニスはダメだったのか

        イグニスに乗ってる人の特徴

        イグニスの販売データや口コミから見えてくるオーナー像(乗ってる人)は、特定の層に偏る傾向があります。

        最も多いのは「一人暮らしや夫婦二人世帯」での利用、あるいは「セカンドカー」としての需要です。後部座席の使用頻度が低く、主に1人か2人で乗るため、室内の狭さが問題になりにくい層です。

        また、取り回しの良いコンパクトな5ナンバーサイズであることから、運転のしやすさを重視する高齢者や女性ドライバーにも選ばれています。

        逆に言えば、後部座席や荷室の広さが求められる「ファミリーユース」のメインカーとして選ばれることは極めて稀でした。趣味の車、あるいは街乗り専用のセカンドカーというのが、イグニスの主な立ち位置だったと考えられます。

        イグニスの中古車が多い理由

        イグニスの中古車が多い理由

        イグニスは生産終了した現在も、中古車市場では一定数の流通が見られます。2025年時点でも全国で170台前後が流通しており、在庫量は安定しています。

        中古車が多い理由としては、まず「生産終了による下取りの増加」が挙げられます。2024年の生産終了のアナウンス前後で、新車(在庫車)や他の車種へ乗り換えるユーザーからの下取り車が市場に放出されました。

        また、「セカンドカーとしての役目を終えた」ことによる売却も一因です。数年間の街乗り用として使用された後、ライフスタイルの変化(家族構成の変化、転居など)に伴い手放されるケースです。

        さらに、デザインが万人受けしなかったことから、購入したものの好みに合わず、比較的早い段階で売却された車両が市場に流れている可能性も指摘されています。

        価格とコスパ

        イグニスの新車価格は、2016年のデビュー時で約138万円から(消費税8%込)と、マイルドハイブリッド搭載のコンパクトSUVとしては非常に戦略的な価格設定でした。安全装備を充実させたグレードでも150万円台から160万円台であり、その「安さ」は大きな魅力でした。

        一部の自動車評論家からは「コスパはトップクラス」「文句なしに買い得」と評価された一方で、市場での評価は異なります。

        消費者が比較対象とするのは、より安価な軽自動車(ハスラーなど)や、同価格帯で質感や走りが優れる「スイフト」でした。これらの強力なライバルと比較された際、イグニスの「中途半端さ」が際立ち、価格の安さが決定的な魅力とはなり得ませんでした。

        生産終了後の現在、中古車市場での価格は60万円から170万円程度で推移しています。年式や走行距離、グレードにもよりますが、不人気車であったことが反映され、リセールバリューは弱含みです。見方を変えれば、状態の良い中古車を割安に購入できるチャンスがあるとも言えます。

        乗ってる人の口コミ・感想レビュー

        乗ってる人の口コミ・感想レビュー

        イグニスの評価は、乗ってる人の間で大きく二極化しています。

        ポジティブな評価(愛好家の声)

        一部のオーナーからは熱狂的に支持されています。 特に評価が高いのは「デザイン」と「走行性能」です。 「レトロでお洒落」「他にないデザインが良い」「イタリアの小型車のようだ」と、その個性を高く評価する声が多くあります。

        また、「車重が軽く(約900kg)キビキビ走る」「骨太で安定感がある」「運転が上手くなったと感じる」など、軽量ボディとしっかりした足回りがもたらす軽快な走行性能を称賛する口コミも目立ちます。燃費性能や取り回しの良さも、概ね高評価です。

        ネガティブな評価(不満の声)

        一方で、不満の声も多く、その内容は「売れない理由」と直結しています。 「デザインがダサい(特にリア)」「安っぽい」という外観への酷評。 「後部座席が狭すぎて使えない」「軽のスペーシアの方が広い」という居住性への絶望的な評価。 「乗り心地が硬く、突き上げがひどい」「高速道路ではうるさくて会話ができない」といった快適性の低さへの不満が、口コミサイトや掲示板で多く確認できます。

        まとめ:イグニスが売れない理由

        イグニスが売れなかった理由、そして生産終了に至った背景をまとめます。

        • イグニスは2024年4月に国内向け生産を終了した
        • 発売初年度(2016年)は約2.4万台を販売したが翌年失速
        • 2017年12月のクロスビー登場が販売不振の決定打となった
        • イグニス 売れない理由は強すぎるスズキの競合車にある
        • ハスラーやスイフト、軽ハイトワゴンに顧客を奪われた
        • クロスビーと比較し室内空間の狭さやパワー不足が目立った
        • 特に後部座席の狭さや居住性は軽自動車以下との指摘もある
        • デザインは個性的だがリアビューが醜いなど賛否が分かれた
        • 市場のトレンドである広い室内空間のニーズと合わなかった
        • 購入後に後悔する点として後席の狭さや荷室容量が挙がる
        • 高速走行時はエンジン音やロードノイズがうるさいと評価された
        • 乗り心地は硬めで路面の突き上げを感じやすい傾向がある
        • 主なユーザー層はセカンドカーや一人での利用が中心だった
        • 生産終了に伴う下取りや乗り換えで中古車流通量が増加した
        • 一方でデザインや軽快な走りを評価する愛好家も存在する
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